「ギブスが取れるのが月末くらいだと思うから、全治1ヶ月から2ヶ月は見ておいた方がいい。今しっかり治しておかないと、あとが大変なんだよ。野球を今後続けたいのなら尚更。残念だけど、それはキミも分かるね?」
医師は凌空の肩に手を乗せ。
「ではお大事に」
頭を下げると、この場を後にした。
全治、2ヶ月……?
それじゃあ、夏が……
甲子園を賭けた夏が終わっちゃう……。
目の前が、真っ暗になる。
「この程度で済んで良かったわ……」
絶句するあたしと凌空に、隼人のお母さんの柔らかい声。
息子を心配していた母親としての、心から安堵する声だった。
「……すみませんっ……俺のせいで隼人は……」
項垂れた凌空は、力なく隼人のお母さんに言葉を落とす。
こうなった経緯は、隠すことなく伝えていた。
……凌空は……ものすごく責任を感じている……。
「起きてしまったものは仕方ないわ。お医者さんも言ってたじゃない。これだけで済んだのが奇跡だって……」
少し目を赤くしたおばさんは、
「じゃあ、隼人に伝えてくるわね」
そう言うと、隼人のいる病室に入って行った。
あたしは……隼人の部屋に入れなかった。
この夏が絶望的になったと知る隼人を、見る勇気がなくて。