……花音ちゃん。


想いの強さに、胸が苦しくなった。


好きになりすぎたからこそ。


報われない想いが憎しみにカタチを変えちゃったの……?



「凌空くんも、ごめんなさい……。利用するようなことして……」


「……はぁ……」



か細い声花音ちゃんの謝罪に、真横から聞こえるのは大きいタメ息と。



「……分かってたけどな」



呟く声。


え、と顔をあげたとき。



「結良ちゃんも……ごめんなさい……」



あたしに向かって頭を下げる花音ちゃんの姿が目に入った。


……あ。


花音ちゃんがあたしに見せた刃は、凌空じゃなく、隼人へ込めた想いから生まれたものだったんだね……。


ぶつけるところがなくて、矛先を変えてしまった不器用な恋。


あたしだって不器用すぎて、きっと隼人を傷つけた。


花音ちゃんだけを責められないよ……。




「……んで、情報は流したのか」



凌空が海道くんに詰め寄る。


問題は、そこだ。


あたしも海道くんの顔をジッと見つめた。



「言ってねえよ。この先も言う気はねえ。正々堂々闘えよ」



口調からは、決して嘘を言っているようには思えない。


……良かった。


すると、側で見ていた男がニヤリと笑った。



「晃の狙いは、野球部に情報を流すんじゃなくて、もっと他にあったんだからな」



……え?



「コイツと対峙すること」



乱暴に顎を向ける先は、横たわっている隼人。



「ファイルを取り返らせたとこで、大人しく帰す気なんてなかったよなー」



花音ちゃんがピクリと反応した。


教室で電話を掛けたとき、血の気が引いていた花音ちゃん。


恐ろしいことを言われてるんじゃないかと思ってたけど。


……やっぱり、ただじゃすまなかったんだよね。