「青翔が、桜宮に負けてくれればよかったの。甲子園に出られなければ、それでよかったの……」



花音ちゃんは泣きじゃくりながら訴える。



「始めは……ほんとに応援してたけど……。矢澤くんと凌空くんと結良ちゃんが、団結して甲子園に向かってるのに嫉妬して……だんだん、行けなければいいなって思うようになった……」



花音ちゃんの本音に絶句し、背筋が凍りついた。


確かに予兆はあった。


笑顔の裏で、あたしに見せた鋭い刃。


その刃に、心が折れそうになったのも確か。


でも、グラウンドで凌空に見せていた笑顔まで偽物だったなんて信じたくなかった。



「矢澤のことで泣いてる花音が見てらんなかったんだよ!」



言って、海道くんは苦しそうに顔を歪めると。



「花音のこと振り続けた男なんだろ!?そんなヤツ、俺がボコボコにしてやるっつうんだよっ!」



理性を飛ばしたような目をして、隼人に向かってくる。


やめてっ……!


あたしと凌空が咄嗟に隼人を守ろうと体を入れたとき。



「もうやめてよっ……!」



海道くんの体を抑えたのは花音ちゃんだった。



「……分かってたよ。あたしが矢澤くんを好きなように、矢澤くんは、結良ちゃんが好きだっただけ……誰が悪いわけでもない……。わかってた……そんなのわかってたのに……」



泣き声に混じる切なすぎる想いに、心が揺さぶられた。



「……ごめんなさい……傷つけたいわけじゃなかった……ただ……好きだった……」