それは花音ちゃんのだったようで、凌空の目を見つめながらもゆっくりスカートのポケットに手入れ。
画面に目を落とす花音ちゃんの顔がみるみる青ざめた。
「……どうしたの……?」
あたしの問いかけにも答えず、花音ちゃんは画面を素早く操作すると、それを耳に当てた。
「もしもしっ……」
誰かに電話を掛けたみたい。
向こうからは、男の子の声が微かに聞こえた。
「お願いやめてっ……」
切羽詰まったように訴えるその手は、震えていて。
「晃、もしもしっ、もしもしっ!……っ……」
一方的に切られたのか、同じ言葉をくりかえした後、放心したように手を下ろした。
晃って……体育祭の時に来てた幼なじみの海道くん……?
顔は真っ青で、唇も震えてる。
「……どうしたの?」
もう一度問いかけると、今度はすがるような目を向けられた。
「矢澤くんにもこのノートを見られたのっ」
さっき見た強気な顔なんかじゃなくて、今にも泣き出しそうに。
正確には、もう抑えきれてない。
「矢澤くん……晃の所にファイルを取り返しに行くって言って……」
「はっ!?ファイルはアイツに渡ってんのかよ!」
えっ……。
じゃあ今、隼人は海道くんの所に……?
「晃を止めに行かないと……」
「……!?」
「晃……なにするか分かんない……」
「……っ」
凌空とあたしは同時に息をのむ。
花音ちゃんの言葉は、隼人の危険を意味していて。
教室を飛び出す花音ちゃんに続いて、あたしと凌空もその後を追った。