……隼人なの?


ふたりしてドアの方を見ていると、やがて足音の主が姿を現した。



「えっ……」



それは、練習着に身を包んだ凌空で。


教室に入ると、躊躇うことなく真っ直ぐにこっちへ向かって歩いて来て。


隼人の机の上に置いてあった、花音ちゃんのサブバッグをひったくる様に奪った。



「やっ…」



言うより早く、ひっくり返した中から落ちてきたのは……。



「え、なにこれっ……」



驚いた。


……野球部のスコアブックだったから。


どうしてこれが花音ちゃんのバッグに?



花音ちゃんを真っ直ぐに見たまま、凌空があたしに説明する。



「1年のヤツが、手塚が部室入ってスコアをカバンに入れるのを見たって。そいつは俺から頼まれたのかと思ったらしい。でも俺、んなこと頼んでねえよな」



花音ちゃんが、盗んだの……?



「なんでこんなことしたんだよ」



……じゃあ。



「前のも……花音ちゃんが?」


「前?」



あたしが言うと、以前の紛失を知らない凌空は、眉間のしわを一層深めた。



「うん……実は、つい先日1冊なくなってるのに気づいたの。でも、これとは違うもので……」


「これだけじゃないのか!?」



――バンッ!


凌空が机に激しく手をつく。



「実は……投手ファイルもなくなってて……」



まさかと思いながら口にしたとき。



♪♪♪~



スマホの着信音が鳴った。