よっぽどビビった表情をしていたのか、手塚は申し訳なさそうに謝ってくる。


……なんとなく気まずい。


コクられた過去もそうだし、結良からあんな話を聞いたっつうのもあるし。



「まだ残ってたんだ」



無視もできず、当たり障りない会話で場を繋ぐ。


野球部以外は帰宅してるはずなのに、なんで居るんだ?



「うん。ちょっと野球部見てきたの」


「ああ……」



ハニカみながら答える手塚は凌空の彼女。


冷やかしあう間柄でもないし、ただ納得だけしながら自分の席へ向かうと。



「矢澤くん……結良ちゃんと別れたんだってね?」



まるでこれを言うために待ってたとばかりに切り出された話題は、心臓に悪影響を与え。


焦りを伝える心拍数の上昇を表に出さない様、エナメルを肩にかけながら曖昧に返事した。



「…………ん……まぁ……」


「どうして?」



触れてほしくなくて濁した俺の努力なんて全く伝わってないのか、手塚は間髪入れずに問いかけてくる。



……なんでそんなこと聞くんだ?


答えを待つ手塚の目を固まったまま数秒見つめてしまったあと、「ごめん」そう言って教室を出ようとすると。



「矢澤くんっ……」



引き止める声と共に、俺の胸に飛び込んできた。



「……っ」



ぎゅっと、腰に手を回される。


……?


困惑して、一瞬身動きが取れなくなった。



「……好きなの…」



細い声が耳に届いた。