それからの隼人と凌空は……。
睨みあうでもなく、文句を言うでもなくて。
教室では目も合わせず、お互いがお互いの存在を視界に入れてない様子だった。
それでも、いざグラウンドに入れば別だった。
部室で着替える時間をずらすことはしても、練習でのいい所や悪い所の声掛けは今まで通りだし、認め合いもする。
そこはふたりが持つ、野球への意識の高さ。
プレーに影響が出ないのはすごく助かった。
恐れていたのは、チームへの影響だったから。
でも、キャッチャーで主将の向井くんは、そんなふたりにハラハラしている様子が否めなかった。
「隼人と凌空、バトルっちゃったんだって?」
部室での騒動が広まるのにも、そう時間は掛からなかった。
それでもエースふたりのことだけに、誰もおおっぴらにウワサできない様子。
わざと明るく問う黒田くんに、あたしはうろたえた。
側では、後輩たちもしっかり聞き耳を立てている。
「よくあることだから大丈夫。仲がいい証拠だよ!」
部員達を不安にさせないように、精いっぱい笑顔でそう答えるあたしが一番不安でしかたない……。
明日から試験、県大会まではあと1週間。
どうしたらふたりが修復できるのか、悩みは果てなかった。