「ありがとな」



隼人の手のひらが、あたしの頭に優しく乗った。


顔をあげる。



「俺のコト、かばってくれて」


「……隼人……」



きゅうう、と胸が痛くなる。


鼻がツンと痛くなったから、目も赤くなってるんだろうなあ……。


でも涙が零れないように、下唇を噛んでグッとこらえた。



「俺はなに言われたって平気。んなことでメンタル壊れるほどヤワじゃないって」


「……」


「じゃなきゃ、青翔のエースなんて務まんないよ」



乗せた手で、頭をクシャクシャっと撫でる。



「結良は部員に愛されてんな。結良の頑張りがはみんなにも伝わってんだろうな」



その中に、隼人も入ってる……?



「最近疲れてるみたいだけど、徹夜で勉強してんのか?」



……見ててくれたんだ。


嬉しくなって、自然と頬が緩む。



「さすがに徹夜は無理だけど、試験近いしそれなりに勉強してる……」


「無理するな。今日は放課後までここでゆっくり休んだらいいよ」


「……うん」



あと2時間授業が残ってるけど、こういう日があってもいいかもね……。




キーンコーン……


ちょうど、昼休み終わりを告げるチャイムが鳴り、



「じゃあ、俺戻るから」


「ありがとう……」



隼人は保健室を出て行った。




あたしの盾になってくれた。


あたしを心配してくれた。


その優しさがうれしくて、ただただ心の中でありがとうをあたしは繰り返した。