「べつに何もしてないよ」
「ううん。隼人が悪者になっちゃったらどうしよう」
隼人は、青翔のヒーローなのに。
「んなのどうだっていい。間違ったこと言ってないから」
そう断言する隼人の男らしさに、胸がキュンとなる。
「それより、言われたのってマネージャーの件だけ?」
「……」
スイッチが入った言葉は、別にある。
でも言えるわけもなく、うまく交わせるでもなく口を噤む。
「京介が俺を呼びに来てくれたんだ。隼人を悪く言うな……って、結良が泣きながら言ってるって……」
「……」
「隠し事はなしだ」
「……ッ。
……甲子園に行けないのは、彼女のにうつつを抜かしてるからだ……って」
目を瞑りながらボソリと呟いた。
どんな反応をするのか、心臓をバクバクさせながら。
「ははは、そうか。んなこと言われちゃったか」
隼人は乾いた声を出した後、
「俺達、まだつきあってることになってんだな」
遠い昔を懐かしむように、しんみりと。
……蒸し返したくない。
あたしに見切りをつけて野球に集中している隼人を、また混乱させたくないのに。
ギュッと目を閉じたままでいると。