体育祭が終わり、校内は気の抜けたような空気が漂っていた。


大きな行事のあとっていつもそう。


体育祭ロスとか学園祭ロスだとか言って、授業に集中できなくなる生徒が多くなるんだ。


行事に向けて頑張っていた分、張り合いがなくなっちゃうんだから当然だよね。


去年までなら、もうすぐ夏休みだし……と、なんとか気持ちを繋いでいたものの、今年は受験生ということで、余計にみんなのキモチも浮上しにくいみたい。


あたしもそれに便乗して、こころにぽっかり大きな穴が開いていた。


体育祭が終わって淋しいわけじゃない。


……隼人にフラれたから。


すべてを打ち明けた沙月には、それはフラれたって言わないよとフォローされたけど。


好きだと思ってる相手に付き合いを解消されたら、フラれたって言うよ……。


『すべてをゼロにして、野球に集中したい』


だとしても。


この夏が終わってからの約束なんて、ひとつもないんだから。



"凌空が好きかもしれない"なんて、自分の気持ちまで迷子にしてようやく気付いた隼人への想い。


知らない間に、あたしの好きは、毎日毎日育っていたんだ。


気が付くのが遅すぎた。


隼人が空気の様な存在になって……でもその中で、確実に毎日呼吸をしていたのに。


隼人が左側に居るのを当たり前に思いすぎていたんだね。


自業自得なあたしの失恋の傷は、まだまだ癒えそうにない。