「わあああああああああっ!」
大歓声がトラックを包む。
「赤組、逆転勝利です!!!!」
マイクが割れるような勢いのアナウンス声が、耳に響いた。
「やったああああっ!」
「川瀬さんっ!無理しちゃ駄目だって!」
救護係は実行委員の子だから顔見知り。
飛び跳ねたあたしを、慌てて椅子に座らせた。
「あはは、痛みも忘れてた」
ふぅ。
暑くなりすぎちゃった。
でも仕方ないよね。
今日一番盛り上がった場面なんだから。
その主役は、あたしの彼氏……。
そう。
彼氏……。
……なのに、あたしは凌空とキスしちゃったんだ。
その罪悪感が、勝利の喜びに影を落とす。
砂埃をあげながら、選手たちがトラック内から退場し始めた。
ぼんやりと隼人の姿を目で追っていると、座席に向かわず別の方向に歩いているのが見えた。
どこ行くんだろう……?
そのまま追い続けていると、隼人の姿がだんだん近づいてきて。
えっ、なんで。
もしかしてこっちに来るっ……!?
どうしようっ。
そわそわし始めたところで、時間は止まってくれなくて。
「よっ」
隼人は救護本部のテントをくぐって、あたしに笑顔を見せた。
「お、お疲れさま……」
「見ててくれた?」
「もちろんっ。1位おめでとう…」