それを目で追うあたしの心は……。
苦しかった。
苦しくて苦しくて、はちきれそうだった。
どうして。
どうしてキスしたの……。
気まぐれでしたと言われた5年前のキスを、ようやく忘れられそうだったのに……。
ひどいよ、凌空……。
凌空はそのまま1位で、第2走者にバトンをパスした。
そこからも、赤組は抜きつ抜かれつを繰り返して……。
アンカーの隼人には、2位でバトンが渡された。
「ラストだあああーーーー!」
「頑張れーーーー!」
観衆は総立ちだった。
応援の太鼓がドンドンと響き渡り。
どのクラス旗も、大きくはためいている。
最高の、クライマックス。
「隼人ーーーーー!!!」
足の痛みも忘れて、思わずその場に立ち上がった。
グイグイと腕と足をのばして前へ進む隼人は、もう少しで1位の人に追いつきそう。
コーナーを曲がると、隼人の表情が良く見えた。
歯をグッと食いしばりながら、目に力を込める気迫あふれる姿は、マウンドに立っている時と一緒。
そんな隼人の頭に巻かれたハチマキは、あたしのもので。
前へ、前へっ……!
不思議と、あたしまで一緒にトラックを駆け抜けているような気がした。
ちょうどあたしの目の前を横切ったところで、1位の人に隼人の姿が重なる。
あっ、抜かせるっ……。
「いけっ………!!」
大きく腕を振りまわしたとき。
隼人が風と共にゴールテープを切った。