「やっ……!!」



我に返って、思いきり凌空の胸を押した。



なんでこんなことするの?


ジワリと涙が浮かぶのは、5年前と一緒。


でも、あのときと違うのは拒否という咄嗟の反応が出来たこと。


一瞬で、突き飛ばしていた。



「……結良……」



凌空は驚いたように目を見開く。


でもすぐに表情を戻し。



「……俺のこと許さなくていいから」



まるで確信犯だと告げ。



「とにかく、救護本部行くぞ」



動揺が収まらないあたしの体を起こした。


まるでさっきのキスなんて、なかったみたいに。



動揺してるのは、あたしだけ……?


立ち上がっても足の痛みなんて感じないくらい、心の中が騒いでいた。


……どうして、キスなんて……。



「……ッ……」



考える間もなく、景色が反転した。


凌空があたしをお姫様抱っこしたのだ。



「あの、ちょっと降ろしてっ……」


「んな足で歩けねえだろ」


「……」



凌空はそのまま歩みを止めることなく真っ直ぐ進む。


抵抗する気力も残ってなくて、あたしは大人しく目に映る空を見つめていた。




どうしてキスしたの……。


5年前は、気まぐれだとして。


今のは、なに……?



ゆれる青空を見ながら、口に出せない想いを、心の中で問いかけていた。