「えっ」
「だって、それ……」
花音ちゃんと交換したハチマキを、怪我の手当てに使うなんて許されるわけないもん。
「……ああ」
"20"の刺繍を見て、わかったようにそれを首に戻す凌空。
「なら……あたしので……」
あたしが頭からハチマキを取ると、凌空はそれをジッと眺め。
「……それは俺がイヤだ」
え……。
それって、どういう意味……?
あたしの手元にあるのは、隼人の出席番号"39"が刺繍されたハチマキ。
しゃがんだまま、凌空があたしに視線を送る。
「結良、逃げて」
「えっ?」
逃げる?
だけどあたしの腕はしっかり凌空に捕まえられてて動けない。
そもそも、どうして逃げなきゃいけないの……。
「結良、ごめん」
重ねて意味の理解できない言葉を言った瞬間。
グッと、凌空の顔が迫ってきて。
唇に、柔らかい感触と温もりが重なった。
「……」
"あの日"と同じ。
……目を見開いたまま重なる唇。
え……。
キス…………?
ちょ、なんで……っ……。
突然のことに、頭が真っ白になりかけたとき。
ブワッと、風があたしの髪を巻き上げて───