「あたし達の仲は、そんなことで壊れるような薄っぺらいもんじゃないでしょ?」



それからほっぺをムニューとつまんで、



「実行委員もマネージャーも、一生懸命頑張ってる結良が大好きだよ」



ぎゅうううっとあたしを力いっぱい抱きしめた。


沙月の胸の中は、温かくて柔らかかった。


心の中まで柔らかくなった気がして、すごく落ち着く……。



「ありがとうっ……」



隼人の言ってた通りだった。


お揃いのモノを持つことで安心感を得たり友情を測ろうとするより。


肝心なのは、心が通っているかどうかだよね。


相手があたしを必要としてくれて、あたしが相手を必要としているか。


誰に見せつけるわけでもなく、あたしたちの仲は、あたしたちだけが知っていればいいことで。


沙月を信じていれば不安になる必要なんてなかったんだ。


あたしは沙月が大好きで、沙月もあたしを好きでいてくれる。


その事実だけが、なにより確かなモノ……。



「教室もどろっ!」


「うんっ」


「あ!その前に結良、着替えに行かなきゃだよっ」


「わわっ、そうだねっ」



自分の体操着に目を落として。



「ふふふっ」


「あははっ」



頭と頭をくっつけたあたし達の笑い声が、非常階段に響き渡った。