話が見えなくて首を傾げるあたしを、美咲ちゃんが不思議そうに見る。
「桐谷くんと矢澤くんて親友なんでしょ?」
「そう……だけど……?」
「手塚さん、矢澤くんにずっと片想いしてたの知ってる?」
「えっ…………」
手からボールが滑り落ち、バウンドした球を美咲ちゃんが拾う。
そして、再びパスしてきた。
「あ、やっぱ知らないんだ。あたし、1年のとき2人と同じクラスだったんだけど、結構積極的に押してたっぽいよ?あ、まだ結良ちゃんともつき合ってなかった時の話ね」
会話が会話だけに、どんどん距離が縮まり至近距離でのパスが続く。
「手塚さんと仲いいみたいだから、知ってるかと思ったんだけど」
……知らない……。
そんなの初耳。
「最初は手塚さんが結良ちゃんと仲良くなってるの見て、大丈夫なのかなーってひやひやしたんだけど、そしたら桐谷くんとつき合い始めたからびっくりしちゃって」
頭の中がこんがらがってくる。
花音ちゃんは、隼人を好きだったの……?
思い出す、春季大会。
それなら隼人に注いでいた、あの切ないような想いを込めた視線も納得できるけど。
その帰りに、凌空への想いを聞いたわけで……。
どういうこと……?
いまは凌空が好きなんだよね?
あたしが凌空と接触してるのをよく思ってない……それが証拠でしょ?