「顔、大丈夫か?」
背の高い凌空が、少し屈んであたしの顔を覗き込んだ。
「うん。抜群な反射神経のおかげで咄嗟にガードしましたから」
「そりゃよかった。鼻血ブーかと思って焦ったわ」
「ちょっと!言い方!」
あたしは笑いながらボールを拾って凌空に返す。
「ぼーっとしてると怪我するから気をつけろよ」
受け取った凌空は、あたしの髪をクシャクシャっと撫でた。
「うん、ありがとう」
去っていく凌空を目で追ったあと、何気なく視線を横に走らせると。
花音ちゃんと目が合い……サッと逸らされた。
……あ。
なんか気まずい。
また気分を害しちゃうかな……。
「今の人でしょ?噂の帰国子女って」
「えっ?う、うん」
前を向くと、美咲ちゃんがボールをパスしてきた。
「で、手塚さんとつき合ってるんだよね?」
「うん」
本人たちが隠しているわけでもないし、頷いて、美咲ちゃんの元へパスを返す。
花音ちゃんと沙月が練習しているところから距離はあるから、会話は聞こえないはず。
「でもさ、乗り換えるにしても相手が親友ってのもどうなの?」
「えっ?」
「ま、結良ちゃん的には安心か」
乗り換える?誰が?
で、どうしてあたしが安心なの……?