「野球部に雨得がなくて残念」



花音ちゃんがチラッとあたしを見た。



そこに笑顔はない。

わざとなのか無意識なのか、ずっとそんな調子。



「……うん、そうだね」



雨得、それは彼女が……って意味かな。

あたしは花音ちゃんの気持ちに沿うよう眉毛を下げた。



あたしも……6月の雨は嫌いだな。


ザーッと降ってカラッと晴れる夏の雨とは違い、ジメジメしてうっとうしい。


視界を悪くする窓の外のグレーは、あたしの気分まで沈ませた。





その日の午後は、体育館でバスケの授業があった。


男子は外でサッカーの予定だったけど、雨のため体育館を共有しての授業。


心なしか、女子が浮足立っている。




「ペアを作って10分間パス練習」



先生からそんな指示が飛ぶ。


ペアか。じゃあ沙月と……。



「沙月、一緒にやろっ!」



あたしが沙月を探すよりも早く、そんな声が聞こえた。


見ると、花音ちゃんが沙月の腕を取っていて。



……あ。


前までは、ペアを作るとき沙月と組むのは自然だった。


でも3人で行動してる今、それはもう暗黙ではないんだと思うと同時、花音ちゃんが沙月を選んだことに、無意識に傷ついてるあたし。