「中村を信じろよ」
「……」
「女子のそういうのよくわかんないけどさ。中村は、部活を一生懸命がんばってる結良を裏切るようなヤツじゃないと思うけど?」
……あ。
そうだね。
沙月はそんな子じゃない。
誰かに合わせて人の悪口を言ったりする子じゃないって、あたしが一番よく知ってるんだから。
「手塚と合わないなら、無理に合わせようとしなくていいんじゃないか?手塚に気を使って、結良が凌空を避けるのも違う気がする」
「……あ……うん……」
意外だった。
隼人の性格上、花音ちゃんともうまく出来る方法を考えるのかと思ってたから。
その後に小さく聞こえた声。
「……結良……ごめん」
えっ……。
隼人は少し苦しそうな表情で、あたしの頭の上に手を乗せた。
「どうして隼人が謝るの……?」
マネージャーをお願いしたこと……?
それとも他になにか……?
わからなくて尋ねたけど、隼人は曖昧な笑みをこぼし。
「とにかく。結良は悪いことをしてないんだから、堂々としてればいいよ」
そんな言葉に、また胸がチクリと痛んだ。
……悪いことをしてない。
あたしは素直に"うん"って言える?
凌空とのキスが隼人に知られて、もう隠しごとはないように見えるけど。
本当はまだ、隠してる。
……心の奥底にある……あたしでさえ不透明な感情を……。
凌空への……想いを……。
花音ちゃんは、それを見抜いてるのかもしれないな。