……なんで、結良が?
それは、結良も同じだったようで。
動きがピタリと一瞬停止し、慌ててカーテンを閉めて姿を隠す。
……逃げたな?
カーテンの向こうに人影があるから、結良がまだそこに居るのは分かる。
俺は窓を開けた。
「おーい」
声を掛けてみる。
すると、またカーテンがチラリと開き。
「……覗き見しないでよっ」
人聞きの悪いことを言われた。
「それは結良だっておなじだろー」
「あ、あたしは暑いから窓を開けようとしただけっ!」
顔を真っ赤にして言う結良に、俺は笑った。
俺が覗いたタイミングで結良もこっち見るとか、どんだけ息がピッタリなんだよ。
……それとも、いつもこっちを見てる、とか?
ヘンな期待が湧きあがったりして……。
「何食ってんの?」
モグモグと口を動かす結良からは、甘い匂いが漂ってくる。
それくらい、近い距離。
「えっ?チョコだけど……」
「こんな時間にチョコとか。太るぞ」
「うるさいなー」
膨れた結良に向かって手を伸ばす。
「俺にもちょーだい」
「あ……うん、ちょっと待ってて」
結良は一度部屋の奥へ消えた。