やがてお腹がいっぱいになり、網の端っこでは誰にも取られなくなったピーマンが黒く焦げていた。
網の下でちりちりと炭が赤い光を放つ。
もうすぐ夏が来るのに。
すっかり闇に覆われた空の下は少し肌寒く、両手を伸ばして暖を取る。
炭からの熱があたしたちを暖かく包み込んで。
空には綺麗に輝く星。隼人の家の庭なのに、どこか高原にでもいったような錯覚さえする。
「高3の夏、凌空が戻って結良もマネージャーになった」
感慨深げに言う隼人に、あたしと凌空が頷く。
「ここまで舞台が整ったなら、これはもう甲子園に行けってことだよな」
力強い言葉に、強い想いを感じる。
10年前から抱いてきた共通の想い。
誰ひとり色褪せることなく、強く持ち続けていた。
凌空が自らの意志で戻って来て。
更にどういう巡り合わせか、あたしまでマネージャーという立場で野球部に関わらせてもらえて。
そしてもうすぐ、甲子園を目指せる最後の夏。
「だな。3人で行こうな、甲子園!」
「うん。あたしも精いっぱいサポートする」
その後も楽しいお喋りは続き、穏やかで居心地のいい時間が流れて行った。
なによりふたりの優しさに、心が癒されて満たされた。
今夜は、幸せな夢が見れそう。
ありがとう。
隼人、凌空。