「うん、おととい駅ビルに新しいケーキ屋さんがオープンしたの。そこに行こうって話してて」
花音ちゃんが目をキラキラさせながら教えてくれる。
「へー、いいなぁ……」
ふたりが今までと変わらない放課後を過ごしてるのは当然のこと。
あたしはあたしで充実しているけど、ちょっと羨ましいな。
「どこの高校も下校時間だから、ちょとタイミング逃したらアウトだもん。ねっ、早く早く!」
「……そうだね」
沙月はそんな花音ちゃんのテンションに苦笑いしながら鞄を肩にかける。
「結良ちゃんはこれから部活でしょ?一緒に行けなくて残念」
「うん……あたしも残念」
残念…という割にはかなり満面の笑みなんだけど。
……なんて性格の悪い感想は心の中に閉じ込める。
でも、笑顔の花音ちゃんからは、本当にそう感じちゃって……。
重なって浮かぶのは、凌空の顔。
もう部活に向かったみたいだけど、いいのかな?
つき合い始めたことで、花音ちゃんも野球部の練習を見に行ったりするのかと思ったけれど、そんなこともなく。
彼氏の凌空が大きな大会を控えて一生懸命練習してるのに、そんなにのん気でいいの?
なんとなく、違和感。
それは、好きな人の為に一生懸命になるって言った花音ちゃんだからこそ。
言葉と行動にズレがあるように思えて。