なんとか頭を起こしたけど、まだ半分夢見ごこちで頭はグラグラしてる。
眠いときって、ほんっとにどうにもならない。
以前眠そうにしていた凌空に、起きなさい!って喝を入れてた自分がものすごく鬼に思えた。
凌空、ごめん……。
今ならわかるよ、その気持ちが……。
そんな凌空は、授業中にあたしがうっかり寝てしまっても無理に起こすこともなく、それどころかあとでノートを写させてくれるという優しさ。
「次の化学実験も後でまとめて渡してあげるから、テキトーに休んでなよ」
そんなあたしを労わってくれる沙月の優しさも身に染みる。
「結良ちゃん、そのノート何?」
少し遅れて化学のテキスト一式を抱えてやって来た花音ちゃんが、あたしの机を覗き込んだ。
目線は、数学のノートに紛れて置かれてる古びたノート。
「ああ、これね。選手のデータとか色々書いてあるの」
仁藤くんから引き継がれたノートで、さっきの授業でこっそり読んでたんだ。
マネージャーとして選手を知るのは当然。
ほんとは自分の目で見て覚えなきゃいけないけど、今はもう時間がないから仁藤くんの力を借りている。
「マル秘データってやつだね」
「そう。覚えることたくさんあるんだよ~」
大あくびをしながら、ノートを鞄にしまう。
今は、とりあえず勉強は二の次。
部活の間に引き継ぎノートなんて見てられない。だから授業中に目を通すしかないの。
そして休み時間は寝て……と、あたしの一日は、野球で埋め尽くされていた。