「おおっ、いい球だ!」
いつの間にか、俺の投球練習を広田監督が見ていた。
俺は帽子を取って、軽く頭を下げる。
「いやあ、今年の夏は贅沢だな。隼人に凌空。左右にこれだけの腕を持った投手を要して、ライバル校からの嫉妬の目が痛いよ。ははは」
「まだまだっすよ」
「そうか?じゃあ益々期待が高まるな。見てみろ。隼人もいい球がグングン来てるぞ」
目線の先では、隼人が投球練習をしていた。
体の芯にブレの無い、いつ見ても安定感のあるピッチングは嫉妬に値するほど。
頑張って体を作った結果だよな。嫉妬もあるけど、すげー尊敬する。
「お前らは2人そろってこそ、力が発揮できるのかもな」
昔から俺たちを知っているからか、広田監督は目を細めた。
ふたりで……か。
そうだな。
結良が隼人のモノだとしても。
一つだけ。
俺にも叶えさせてくれ。
───甲子園への夢を。