……出たな。凌空節が。
昔から、凌空はこうだった。
確実に的は射てないのに、それでも間違ってなくて。
そんな"迷言"は、いつだって俺の肩の力を緩めてくれた。
久々の凌空の"迷言"に、気持ちが少し軽くなる。
「樋口に勝とうなんて思うな。ただ、自分を越えろ」
「……」
「今の自分を越えたら、きっと結果はついてくる」
自分を……超える……?
正面を見据えた凌空は、何の迷いもない目をしていて。
「終わったことに縛られんな。後悔からは何も生まれねえよ。ただ後退するだけだと思わねえ?
…んな暇あったら、前だけを見て突き進めよ。自分の限界を探るために」
自分の限界……。
「自分を越えるためには、今の自分を変えろ。変わることを恐れるな」
……そうか。
樋口がどうかなんて関係ない。
俺がもっと強くなればいいんだ。
"いつも通り"じゃ勝てないことは、ハッキリしてんだろ……?
だったら。
――俺が変わるしかない。
今の自分で満足なんてしてねえ。
まだ俺には出来る。
残りの2ヶ月、挑戦できることのすべてをやらなくてどうすんだ。