野球を始めるきっかけは、まだ"甲子園"がどんな所かもわからなかったのに"甲子園"に行きたいと思ったからだ。


女の子だから甲子園に行けないと泣いた結良のために、何としても"甲子園"に行くんだって思った。


本格的に野球を始めてから、"甲子園"は聖地なのだと知り、本気で憧れの場所になった。


東京ドームに、福岡ドームに、札幌ドーム。


中学時代はリトルの遠征で、あらゆる地に行き、プロの野球をこの目で見てきた。


夏の高校野球を甲子園に見に行くプランもあった。


でも、俺は行かなかった。


甲子園に行くときは、選手としてグラウンドに立つ。


そして、結良と凌空と一緒だと決めていたから……。



「は、やと……?」



結良の目が、大きく見開いた。



「最高の甲子園、結良に見せてやるからな」



本当は口にせずに、カッコよく連れて行くつもりだった。


でも、今年がラストチャンスだと思ったら、言わずにはいられなかったんだ。



再びの誓いで、自分を振るいたたせるために。