何故そうなったのかは覚えている。

でもそれがいつからなのかは覚えていない。

きっかけは些細なことだったと思う。

深夜のこと。           

両親をたずねて部屋を訪れると、その会話はまるで密談のように密かに交わされていた。


「ねぇ、あの子。どうするつもりなの?」

「あんなフィーロウ家の恥さらしのことなど知るか!」

ドンッと苛立たしげに殴られたテーブル。

「でも、このままうちに置いておくのは・・・。」

「当たり前だ。フィーロウ家は由緒正しい名門貴族だぞ。あんなヤツがいたら、格が下がりかねん。」

父は赤紫の飲み物を煽った。

「あんな、赤い瞳の娘など!」