「さて、アリア。突然だが、」

王子は私の手を取り、軽く口付ける。

そして、


「俺の花嫁になってくれないか?」

は?

(この王子はバカなの?) 

この国では、代々近くの国の姫をめとってきた。

王子の妻という立場は、たかだか貴族が居座って良い場所ではない。


「ルキ様。どうかお考え直しを。私のような娘など、貴方には「アリア。」


相応しくない。


そう告げようとした矢先、聞いたことがない今までの笑顔からは想像できないほどの冷たい声で遮られる。

「これはお願いではない。命令だ。」

さっきまでは優しく添えられていた手も、強い力で握られている。


まるで逃がさないとでも言うように。


「相応しいかどうかを決めるのは俺だ。分かったな?」


口元に笑みを浮かべながら言われるが、眼は笑っていない。

「は、い。出すぎた真似をお許しください。」

忘れていた。

ルキ・ルメルシア様は



冷酷非情で有名な王子だということを。