サーシャはこの町で作られた酒を、オレンジに似た様な果実の汁と合わせ、グラスに注ぐとその騎士の前に差し出した。

「この町でしか飲めないカクテル。美味いよ。さっぱりする」

騎士はゆっくりとグラスを口につけた。
その振る舞い一つ見ても、自分達のような平民ではないとサーシャは確信する。

「・・・美味いな」

「でしょう?あんたの住んでる所の酒に比べたら大したもんではないけどね。・・・ああ、ごめん。いい所の人なんだろうけど、言葉遣いを変えることが私には出来ないから。申し訳ないね」

「・・・大丈夫、気にしない」

そう静かに言うと、またゆっくりと酒を飲む。
サーシャはその騎士との会話を終えると、常連への対応をしに騎士の前から移動した。

騎士は手を顔の前で組みながら、目でサーシャを追う。
サーシャは常連と何気ない会話で笑っている。

その姿を騎士は切なくもどこか愛しげに見つめていた。

そして、一言小さな声でこう呟いた。


「やっと、見つけた・・・・」