カラン。

賑わいの中で、扉につけていたベルが鳴る。
サーシャはうるさい中でもベルの音を聞き、扉の方に目を向けた。

店内に入ってきた者はこの町の住人ではなかった。
立派な鎧を身に着け、背中には重そうな剣を背負っている。

その姿から明らかにどこかの国の騎士、しかもかなり身分の高い者だと見受けられた。

騒がしい酒場の空気が一変する。

常連はみなその騎士に目を向け、動かなくなる。
サーシャも一瞬怯んでしまったが、すぐ気を取り直し入り口の前で立つ騎士に声を掛けた。

「・・・いらっしゃい。ここの席空いているから、どうぞ」

騎士は無言でその席に着いた。
サーシャはカウンターにいた常連に今まで通りに、と小さく話し少しずつ静けさは消えていく。

「ごめん、ここ、常連ばかりだから。周りがちょっと驚いただけ。あまり気を悪くしないでね」

「・・・ああ」

「何飲む?」

「・・・まかせる」