「私・・・・もう子供が生めないのよ・・・」

ゆっくりと目を開けると、ディルに向かってぼそりと話した。

瞳を閉じても、開けても、そこは闇しかない。

まるで自分のこれからの未来を映しているかのようだ、とリリィは思う。

逃げた時は、このまま盗賊や野獣に殺されてもいいと思っていた。
いや、こんな役立たずの人間など殺されてしまえばいい、と敢えて危険な夜の森を歩いていた。

しかし運が良かったのか、それとも死ぬ事を許されないのか、リリィは危険な目に合うことなく、やがて知らない町へと辿りつく。


リリィは思う。

生きて、自分が殺してしまった子供の為の "懺悔"をしろと神が仰っているのだろう、と。
それを一生抱えながら、生きていく事が自分にとっての贖罪なのだ、と。

死ぬ事よりも残酷な罰であるということ。
それを身に染みて感じている。