「待たせて悪かったな」
「いえ」
結局、松前には帰るとは言わずに、秘書にこのまま失礼するとだけ伝えた。
外に出た昌磨は、レストランを見つめ、
「やっぱり、此処はやめよう。
なんだか支局長が追いかけてきそうな気がする」
と呟く。
「……確かに」
揉み手をしながら、妙な愛想笑いで食事中に来られても落ち着かない。
少し走って、来る途中に見た庭の木々が素敵なレストランに立ち寄る。
寒くなければ、テラスで食べたかった、と思いながら、花音は全面ガラス張りの店内でメニューをめくる。
「迷いますね〜。
なんにしようかな。
あっ、タンシチューがある。
ランプ肉の赤ワイン煮込みも」
と呟いていると、
「昼から、がっつりだな」
と笑われた。
「職場に戻るまでに酔いが覚めるなら、呑んでもいいぞ」
ふいに昌磨がそんなことを言い出した。
「ええっ?」
「いや、酒に合いそうなメニューじゃないか」
「怒られますよ〜」
「部長には黙っておいてやる」
「いやいやいや。
じゃあ、課長こそ、呑んでください」
私が運転しますよ、と言ってみたが、
「走り屋に俺の車は渡せんな」
と言われた。



