朔夜さんは閉められたドアの向こうをどこか楽しげな目で見つめて、俺に視線を滑らせる。

「お前、なんでここに来た」

「え、あ…」

 とっさに声が出ずに、口ごもる。

 朔夜さんは特に気にした様子もなく、ソファから立ち上がると俺を見下ろす。

「分かってんのか?ここは裏社会にも通じかねねぇ入口だ」

「分かっています!俺は…」

「分かってねぇよ。お前は何も。…ここは、お子様を守る場じゃねぇ。血で血を洗う場所だ」

 急に覇気を出した朔夜さんに思わず息が詰まる。

 分かってるはずだ。ここが決してきれいな場所ではない、危険が伴う場所だと。

 でも、その甘い考えが一瞬で蹴散らされる。

 ここは想像以上に危ない場所なのかもしれない。
 俺がいていいところじゃないのかもしれない。