マンションの前で立ち止まり、私は早苗さんに頭を下げた。
「ありがとうございました。」
「今日は朱里に会えて嬉しかった。」
早苗さんがポツリと呟いた。
「ずっと会いたかった。」
私は何も言えず、ただ黙ってその言葉を聞いていた。
ほんの少しの沈黙が流れた。
冷たい冬の夜風が吹き付け、私は乱れた髪を押さえて、早苗さんの顔を見ないようにもう一度頭を下げた。
「……おやすみなさい。」
「朱里…。」
早苗さんの手が、私を引き寄せ抱きしめた。
「帰したくない。」
「…ダメです…。私は…順平と一緒にいるって決めたんです…。だからもう…。」
涙が溢れそうになるのを必死で堪え、早苗さんの体を強く押し返した。
「おやすみなさい…マスター。…さよなら。」
「朱里!!」
急いで早苗さんに背を向け、エントランスに駆け込んだ。
エレベーターの中で、行き先ボタンも押さずに一人で泣いた。
早苗さんの事はもう忘れよう。
優しく抱きしめて頭を撫でてくれた事も、優しいキスも、忘れてしまおう。
これ以上、順平を悲しませる事はしたくない。
私は順平と、もうどこにも行かないと約束したんだから。
「ありがとうございました。」
「今日は朱里に会えて嬉しかった。」
早苗さんがポツリと呟いた。
「ずっと会いたかった。」
私は何も言えず、ただ黙ってその言葉を聞いていた。
ほんの少しの沈黙が流れた。
冷たい冬の夜風が吹き付け、私は乱れた髪を押さえて、早苗さんの顔を見ないようにもう一度頭を下げた。
「……おやすみなさい。」
「朱里…。」
早苗さんの手が、私を引き寄せ抱きしめた。
「帰したくない。」
「…ダメです…。私は…順平と一緒にいるって決めたんです…。だからもう…。」
涙が溢れそうになるのを必死で堪え、早苗さんの体を強く押し返した。
「おやすみなさい…マスター。…さよなら。」
「朱里!!」
急いで早苗さんに背を向け、エントランスに駆け込んだ。
エレベーターの中で、行き先ボタンも押さずに一人で泣いた。
早苗さんの事はもう忘れよう。
優しく抱きしめて頭を撫でてくれた事も、優しいキスも、忘れてしまおう。
これ以上、順平を悲しませる事はしたくない。
私は順平と、もうどこにも行かないと約束したんだから。



