烏が鳴いてる……。

 目を開けると、地面が見えた。
 赤黒く沈んだ空気に、はっと身を起こす。

「あーっ!」
 もう七時前だった。

 和尚っ。和尚はっ!?

 這うようにして、林の陰から身を出し、淵を覗く。

 祠の前に、新しい榊があった。

 がっくりと透子は項垂れる。

 信じらんなーいっ。なんでこんなところで爆睡してんの、私。

 こんな寝心地の悪いところでっ。

 膝を抱えて暴れる透子の鼻を、嗅ぎ慣れた匂いが突いた。

 香の匂い。

 どこから? と辺りを見回す。

 ふと思いついて、今、鼻を近づけたばかりの自分のスカートに顔を寄せた。

 ……ここから匂う。
 なんで?