でも、なんで幽霊になっちゃったんだろうか。


わたしは今まで幽霊なんていないという考え方に賛成だったので、死んでしまった後はてっきり、すっきりぽっくり、さらっと輪廻転生するのだと思っていた。


幽霊って未練があるからなるものだよね。未練、未練ねえ。


「うーん……」


少し振り返ってみる。


直前に起きたことなのに、死の記憶はひどく曖昧で混濁していた。


ものすごくふらふらしてたから飲酒運転だろうか、車に巻き込まれて。痛いと思う間もなく、意識を失った。


自分の死に関して、覚えている事柄は少ない。


訪れた死というものは、ひたすら真っ白にまばゆくて。

きっとすぐに意識を失ったから、悲惨な状態の体から連想するほど、痛くはなくて。

夕飯の材料が飛んで。


……ああ、そうだ。


ただ、泣き虫な夫だけが心残りで、会いたいと強く願ったはずだった。