「きょっうのゆーはん、どうしよっかなーっと」


作詞作曲、わたし。今日の夕飯どうしようかな、の歌である。


ケンカしちゃったから、夜くらいは奮発して誠意を見せようと、わざわざスーパーに行って買い物してきた。


これで蛍が大好きなもの尽くしの夕飯を作ってやろうではないか。


ふんふふん、と上機嫌に鼻歌を歌いながら、家路を急いでいたときのことだった。


「逃げろ逃げろ逃げろ!」

「早く!」

「きゃああああ!」


不穏なざわめきが聞こえた。わたしの後ろを見て、誰もが息をのんでいる。


「え……?」


ギュオン、と耳元でおかしな音がする。


慌てて振り返ると、なぜか車が目前に迫っていた。


「え」


理解が追いつかない。


なんで車が、ていうか蛇行してるしこっち来てるし……!


混乱する頭では、足を動かす、たったそれだけの命令を下すのさえ難しく、恐怖に固まったままで。当然、目の前が車の色で染まる。


横転する視界の端で買い物袋が飛んだ。買ったばかりなのに、とどこかずれた思考。


夫の顔が蘇った。


死ねるものか。まだ仲直りも。


—————————————————ほたる。


死は一瞬で意識を奪っていった。