小さな街の小さな駅。

ちゃんと窓は閉まっているのに風は中へと入り込んでくる。

頬を冷たくさせる冬の風に私はマフラーに顔を埋めた。

ほう……っと小さく息をつく。

白くなったその息はゆらりゆらりと舞う。

ちらちらと粉雪が振り始めた空を窓越しに見つめながら、ただただひたすら待つ。

寒さに負けないような胸からこみ上げてくるこの熱い熱に一人小さく笑う。

もう少し。

小さな待合室で彼の乗る電車を待つ。

この待っている時間は何回体験してもうずうずするものだ。

慣れることはないんじゃないかと思う。

この感覚が過去の思い出を蘇らせて、ワクワクさせる。

モコモコしたコートのポケットから鏡を取り出し、自分の姿を映し出す。

風のせいで髪が乱れてきてる。

そっと手櫛で直し、整えると鞄の中のスマホが私を呼ぶ。

急いで鏡を仕舞い、スマホを取り出す。


『もうちょっとで着くよ。もう少し待っててね。』


画面に映し出されたその文字に、顔が自然とふにゃふにゃと歪んでいくのがわかる。

本当にあともう少し。

そう思うと嬉しさのあまりに笑みがこぼれた。