お気に入り同期と恋人ごっこ



社用車じゃない奥野さんの運転する車に
乗るのは始めてのことで
なんだか緊張しちゃう。


そして私服姿・・・
ナイキのスポーツウエア姿にまた惚れ直す。


「おはようございます!
今日はよろしくね」


「ちゃんと役目果たせよ!」


「ちょっと待ってくれるかな?
なんで頼んだ方が
上から目線なんでしょうか?」


「はいはい すみませんね」


「今日はあたしは奥野さんの彼女
奥野さんの彼女だよ 彼女 彼女」


「おい!何呪文みたいなこと言ってんの?」


「自分に言い聞かせてるの!
心に入れておかないと
向こうに『ホントに彼女?』って聞かれて
『違いますっ!彼女じゃないですっ!』
って言ってはいけないからね」


「頼むよぉー!」


でも 彼女と言っても
あたし奥野さんのこと知らないことばかり。


「悪いけど 今日は一日『朱音』って
呼び捨てさせて貰うわ」


「・・・えっ‼」


「えっ‼とか言って
彼女なのに『上野』はおかしくない?」


「ああ・・・そうね」


「だから上野も『奥野さん』は禁句だぞ」


「ああ・・・そうね
なんて呼ぼうか?」


「奥野さん以外なら何でもいいわ
任せる」


「うーんそれなら
ちょっと呼んでみたいことがあるんだ」


「なんて?」


「蒼ちゃん」


「アハハ!!!ないわ!!!
それっておかしいって!」


「そうかな。。。それなら
まだ付き合ってホヤホヤの
ウブな彼女で名前呼べません!設定は?」


「アホか!」


結局
恐れ多くも『蒼介』と呼ぶことに
たった一日の『蒼介』『朱音』