「も~……本当に5時間目出ないの?」


階段の壁に背中を預けるオレに、小林が口を尖らせる。


「あぁ、悪いけど眠くなっちゃったから寝てる。

次体育だしな。岡田がうまく誤魔化すから大丈夫だよ」


目を瞑るオレに、小林はぷーっと頬を膨らませて……諦めたようにため息を落としてから教室に戻って行った。

小林の足音が遠ざかるのを確認してから、オレは静かに目を開ける。


そして、天井を仰いだ。



小林がオレのために手作りしてくれたのがすげぇ嬉しいのに。

嬉しかったのに……


あの中に高遠の好きなものがあんのかな、とか。

本当なら高遠に作りたかったんだろうな、とか。


オレの幸せを邪魔するような言葉がぽんぽん浮かんできて、絶頂気分を阻害する。


隣では小林が笑いかけてくれたのに。

オレが食べてたのは小林の手作り弁当なのに。



いちいち出てくる高遠が、鬱陶しくて仕方なくて……オレの気分を複雑化させる。


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