「悪いんですけど、オレの彼女すごいやきもち妬くんで、こうゆうのはちょっと……

うまそうなんで勿体ないんですけど」

「あ……そうなんですか。

じゃあ仕方ないですよね……そうですよね、彼女いるんですもんね……」

「すみません」


少しショックを受けたようにも見える馬場が、紙袋を持ったまま学習室を出る。

ピシャンとドアが閉まったところで、女子生徒が口を開いた。


「……可哀想。もらってあげればよかったのに」

「だから言ったじゃん。彼女がすげぇやきもち妬くからって。

……多分、もらわなくてもこの話聞いただけで少しご立腹だろうけど」

「……手のかかる彼女で大変だね」

「別に。そうゆうとこも気に入ってるから問題ねぇよ」

「うわぁ~、矢野センすげぇノロケ!」


オレの言葉に、矢野センは照れる様子もなく余裕たっぷりに微笑んだ。

そしてその微笑みを向けられた女子生徒は口ごもって、小さく笑みをこぼす。

……なんだ、この空気。

なんか甘ったるくね?


「ところで、澤田。片思いの相手とはどうした?」


急に話題を振られて、オレは首を傾げる。


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