「……どうぞ」


すると小林の表情は一気に明るくなって……嬉しそうに話し出す。


「あのね、初めて逢ったのは学校説明会の時だったの」


ご丁寧に出会いから話し始めた小林。


小林の話ならなんでも聞きたいし、知りたい。

高遠との事以外なら。

いや、高遠との事だって本当は知りたいんだ。


……だけど聞きたくない。


思いっきり矛盾してるし。

誰かさんのせいで。


「学校説明会で先生を見た時は、ニコリともしない無愛想な先生だなって思ってた。

だけど、あたしその帰り道で引ったくりに遭ってね、叫ぶ事も出来なくて地面にしゃがみこんでた。

そしたら、あたしの後ろから走ってきた人が引ったくりを追いかけてくれて……鞄を取り返してくれたんだ」

「……それが高遠?」


オレの問い掛けに、小林が満面の笑みで頷く。

頷く仕草で、小林の髪が耳から流れ落ちた。


「そう。引ったくりを警察に引き渡して色々書類とか書いてる間、先生はずっと一緒にいてくれたんだ。

お母さんが迎えに来てくれるまで、あたしが落ち着くように気を使ってくれて……あたしの震えがやっと止まった時、優しく微笑んでくれた」


高遠との出会いを話す小林は、1つ1つの事を大切そうに言葉にした。

高遠を思い浮かべる小林の横顔がきれいで……オレは手を握り締める。


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