「別れてすぐはまだ落ち着かなかったから、とてもじゃないけど話す気にはならなくて……でも少しして、澤田くんには話そうって思って……」

「……思って?」

「うん……思ったのに言えなかった。

先生の事があったから澤田くんは友達になってくれたのに……別れたなんて言ったら離れていっちゃうんじゃないかって不安になって……

でも先生と付き合い始めてからは友達作らないようにしてたし、元に戻るだけだって、何度もそう思おうとした。

だけど……」


小林の手が、オレの手を握り返す。

オレより一回り小さい手が無性に愛しくなって、オレはそれ以上にしっかりと手を握った。


「だけど、無理だった。

澤田くんと話したり一緒にご飯食べたり一緒に帰ったり……それがなくなるなんて考えられなくて……

あんなに先生の事好きだったのに……なのに思い返すと、澤田くんの事ばかりが頭に浮かんだ。

澤田くんと笑いあった事ばっかり浮かんできて……気付いたら好きだった」


『好きだった』

小林の口から出た言葉に、またしてもオレの中に嬉しさが募る。


「でも……オレが小林が好きなの気付いてたんならすぐ言ってくれればよかったのに」


オレの言葉に、小林は少し気まずそうな顔をして……小さく俯いた。


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