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「……で、いつ別れたんだよ」
結局、ずっと抱き合ってるなんて普通に無理で、オレ達はいつもの階段にいつものように隣同士に座る。
……5時間目はサボリ。
「澤田くんとケータイを取りに学校に行った事あるでしょ?
……その数日後かな」
「え……そんな前に?」
驚いたオレに、小林はコクンと頷く。
静かな廊下に、ほんの僅か低い周波数が聞こえる。
どこかのクラスの授業をするこの声は……
「矢野先生の声聞こえるね」
「……ああ」
「……あたしね、先生を好きでいるのがいけない事だとは思わなかった。
けど……先生があたしを見る時、いつも困ってるみたいに笑ってて……それが苦しかった」
一度逸れた話題を、小林がまた元へと戻す。
別に無理に聞き出す気もなかったけど……正直気になっていた事に、オレは黙ってそれを聞いた。
「先生が別れを切り出したい事はずっと気付いてた。
付き合うのだってあたしが無理言って付き合ってもらってたようなものだったし……先生を困らせるしか出来ないなら、付き合ってちゃダメだって、そう思って……あたしから切り出したの」
1つ1つ、大切なものを掘り起こすように話す小林。
オレはそんな小林の手を握る。
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