……――――ガラ


突然開いたドアに、オレは静かに顔を上げる。


するとそこにはさっき出て行った矢野センがいて……教室に入ってきてドアを閉めた。


「ほら」


差し出された缶コーヒーに、オレは顔をしかめる。


「なんだよ」

「失恋記念? ……苦ぇぞ。ブラックだから。大人の味」

「何が大人の味だよ」


受け取りながらそうこぼすと、そんなオレに矢野センは優しく微笑んで……オレの頭をポンポンと叩いた。


「そ。何が『大人』だよな。

……全部飲み込んでやれよ。今回の事全部、おまえの糧にしてやれよ。

泣き寝入りなんて悔しいだろ」

「……矢野センってキザだよな」

「少し無理してカッコつけてるくらいがちょうどいいんだよ」


そう言って缶コーヒーを開けた矢野セン。

オレも小さく笑みをこぼしてから……缶コーヒーを開けた。



.