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古文学習室に、静かな空気が流れる。


あの後、矢野センは何も言わずに出て行ってしまって、古文学習室にはオレ1人。

相変わらず埃っぽい匂いが鼻につく。


オレは1つため息をついてから、床へと視線を落とした。

この教室は、どこを見ても小林と高遠の姿を思い出してしまって。

初めて2人を見た時の事を思い出してしまって……心臓が痛くなるから。



今頃……小林はきっと笑ってる。

少しやり方は荒かったかもしれないけど……結果オーライだからいいだろ。


小林に……好きな奴に嫌われるように仕向ける。

ずっとそうしてきた高遠は、本当につらかったんたろうな……

自分がその立場になって初めて気付いた。


小林に嫌われて……初めて気付いた。



「くそ……」



ごめん。

ごめんな、小林……


傷付けてごめん。

裏切ってごめん。

キスしてごめん……


ごめんな……

ごめん。



……好きだったよ。



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