恋するキミの隣で。~苦さ96%の恋~



「数学は好きだったかな。その前に嫌いな教科はなかったよ」

「つまんない答えだなぁ。……でも先生らしいけど」


1日溜めておいた笑顔を、ここぞと言わんばかりに振舞う小林。


その表情はあどけなく、教室にいるクールな小林の影なんかなかった。

頬を少し染めて話す小林に、オレの胸の奥が鈍く痛んだ。

だけど、そんな嬉しそうな小林の笑顔は、高遠の一言で消えていく。


「それより、小林。お昼の弁当だけどな、いつもここに持ってこられても困るんだ」


気まずそうに言った高遠を、小林が見つめる。

その小林の表情は、いつも教壇に立つ高遠を見つめる、あのひどく切ない顔だった。


「迷惑……?」


やっと絞り出したような消えそうな声が、静かに落ちた。

そのまま泣き出してしまいそうな必死の微笑みが痛々しくて、思わず抱き締めたい衝動に駆られる。

だけど高遠の表情は極めて冷静で落ち着いていて……そんな態度に腹立たしさを覚えた。


付き合ってんだろ……?

なんであんな顔した小林見て、んな余裕かましてられんだよ。

……やっぱり高遠は冷血人間だ。


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