「小林、それは古文の教師にする質問か?」
薄い苦笑いを浮かべる高遠も、いつもとは少し雰囲気が違った。
高遠も、いつも生徒に見せるような顔じゃなくて……ってゆうか、高遠が笑ったとこなんか初めて見たし。
超貴重だな。写メでも撮っとくか?
どうせ明日はメグミが怒って問い詰めてくるから、その時に見せて難を逃れるか。
メグミの事だから、きっと「え~!プレミアじゃん!」とかって騒いで今日の事は忘れるだろ。
そんな軽い思いに、手に持ったケータイの画面をカメラモードに切り替えた時――――……
オレは自分の耳を疑った。
こんなにも自分の耳を信じられなかったのは初めてかもしれない。
だって……や、この状況からしてよく考えてみればそうだけど……
だけど、だけど――――……
「古文の先生じゃなくて、恋人の先生に聞いてるの」
小林の照れたようなはにかんだ笑顔が、オレの胸を強く打つ。
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