「おまえっ……ふざけんな、教室戻れよ! オレが怒られるだろぉが!」


そのままの足で数学学習室に行くと、驚いた顔した矢野センにため息をつかれた。

つぅか、怒鳴られた。

そんな矢野センなんか気にせずに、オレは後ろ手にドアを閉める。


「よく言うよ。さっきは注意もしなかったくせに」

「おまえが廊下うろついてる分には構わねぇけど、ここにいられると困るんだよ。

教師のオレが注意されんだから。どっか行け」

「……なぁ、矢野センはいつから小林と高遠の事知ってた?」


煙たい顔していた矢野センが、オレの言葉に真顔になって……小さくため息をついた。


「……付き合う前から知ってたよ。高遠に相談されてたからな」

「相談?」

「どう断っても諦めないって。まぁ……高遠も小林を想ってたからあんまりキツくは断れなかったんだろうけど」


黙ったオレに、矢野センも何も言わなかった。


確かに……確かに、高遠の気持ちが分かるんだ。

好きな奴のためならって……自分の想いを殺してる高遠の気持ちが分かる。

それは、正しい……のかもしれない。



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