なんなのよ、と私は心の中でひとりごちる。
どうしてそんなこと言うの?
どうして、私を喜ばせるようなこと言うの?
「なんだよ、うさ。もしかして照れてんの?」
俯いたまま顔をあげられずにいる私に、トラが小さく笑いながら言った。
ばか、違うわよ。
むしろムカついてるの。
どうしてそんな微笑みを私に向けるの?
どうしてそんな優しい声を私にかけるの?
何を考えているの?
言ってやりたいけど、のどが詰まったように何も言えない。
―――トラがどういうつもりなのか、分からない。
だから、私もどうすればいいのか分からない。
婚約者がいるのに、私をこの部屋に住ませているのは、どうして?
本当にただの同僚だと思っているから?
女として見ていないから?
そうだよね。
私もそうだった。
トラのこと、男だなんて意識したことがなかった。
あまりにも居心地がいいから。
一緒にいて楽だから。
だから、トラとの間に壁なんか感じていなかった。
でも―――気づいてしまった。
私はトラのことを、特別な存在だと思っていることに。
トラの一番近くにいるのは私だ、と思っていたことに。
気づいたと同時に失恋して、トラのことは諦めようと思ったのに。
それなのにトラの態度は、五十鈴さんがここにやって来た日以降も、今までと何も変わらなかった。
今まで通り私をここに住ませて、今まで通りに話しかけてきて。
だから私は混乱しているのだ。
どうしてそんなこと言うの?
どうして、私を喜ばせるようなこと言うの?
「なんだよ、うさ。もしかして照れてんの?」
俯いたまま顔をあげられずにいる私に、トラが小さく笑いながら言った。
ばか、違うわよ。
むしろムカついてるの。
どうしてそんな微笑みを私に向けるの?
どうしてそんな優しい声を私にかけるの?
何を考えているの?
言ってやりたいけど、のどが詰まったように何も言えない。
―――トラがどういうつもりなのか、分からない。
だから、私もどうすればいいのか分からない。
婚約者がいるのに、私をこの部屋に住ませているのは、どうして?
本当にただの同僚だと思っているから?
女として見ていないから?
そうだよね。
私もそうだった。
トラのこと、男だなんて意識したことがなかった。
あまりにも居心地がいいから。
一緒にいて楽だから。
だから、トラとの間に壁なんか感じていなかった。
でも―――気づいてしまった。
私はトラのことを、特別な存在だと思っていることに。
トラの一番近くにいるのは私だ、と思っていたことに。
気づいたと同時に失恋して、トラのことは諦めようと思ったのに。
それなのにトラの態度は、五十鈴さんがここにやって来た日以降も、今までと何も変わらなかった。
今まで通り私をここに住ませて、今まで通りに話しかけてきて。
だから私は混乱しているのだ。



